バスク語を読もう

バスク語読解の記録を不定期に更新

Gramatika / バスク語の文法について

バスク語の文法は、英語やドイツ語、スペイン語やフランス語などのいわゆるメジャー言語と比べるとかなり特殊です。

そんな特殊な文法を持つバスク語についてこれまで書いてきたのですが、まあ正直自己満足的な側面が強かったので、特に解説もせずに書いてきました。

バスク語言語学にそこそこ詳しくないとチンプンカンプンな内容だったと思います。

 

ということで今回は、簡単にですが、バスク語の文法について書いてみたいと思います。

 

 

 

 

基本情報

基本情報というのは、人称とか数とかそういうやつです。

英語でも三単現ってありますよね。

 

人称はまず1人称と2人称があります。3人称もあります。

ただ1人称と2人称は人称代名詞がある一方、3人称は「これ」「それ」「あれ」といった指示代名詞で代用します。

ちなみに「私」が "ni"、「君」は "zu" です。

 

次に数ですが、これも単数と複数があります。

 

名詞の性の区別はありません。

 

最後に時制ですが、動詞の説明の際にも説明しようと思いますが、現在形と過去形があります。未来を表す形もあります。

 

格というのは、名詞の後ろにくっついて名詞の役割を決める働きを持っています。

名詞の役割というのは、主語や目的語もそうですし、ほかにも場所を表す役割もあります。

「~から」「~へ」「~で」「~の」などがあります。

あとは「~によって」「~のために」もそうです。

 

英語などで前置詞が担っている役割を格が担っているイメージです。

逆に言うと、バスク語には前置詞はありません。

 

バスク語にはこの格が16種類あり、さらに単数と複数で形が変わります。

 

16種類と聞くとちょっと身構えますが、慣れといえば慣れです。前置詞がないと思えば…

 

動詞述語

バスク語で一番複雑と言われているのが動詞述語です。

 

まず、バスク語の動詞は一部の例外を除き、助動詞とセットで使われます。

ここでは動詞と助動詞を合わせたものを動詞述語と呼んでいます。

 

例えば次の文は「私はバスク語を勉強する」という意味ですが、

Nik euskara ikasi dut

下線部分が動詞述語になります。

ikasi が「学ぶ」という動詞、dut が助動詞です。

 

以下、助動詞→動詞の順で説明します。

 

助動詞

バスク語の助動詞は、

  • 主語の人称(1人称・2人称・3人称)
  • 主語の数(単数・複数)
  • 直接目的語の人称(1人称・2人称・3人称)
  • 直接目的語の数(単数・複数)
  • 間接目的語の人称(1人称・2人称・3人称)
  • 間接目的語の数(単数・複数)
  • 時制(現在・過去)
  • 法(直説法・仮定法・可能法)

この8つに合わせて変化します。

正直全部で何通りあるのか数える気も起きません。

ちなみに直説法の現在形だけで90通りくらいあります。

 

ただこれを全部覚えてなきゃバスク語が読めないというわけではありませんし、一応規則っぽいものもあります。

 

例を挙げます。

 

Nik liburua irakurri dut. 「私は本を読む」

liburu: 本 irakurri: 読む

 

この dut は、主語が1人称単数(私は)、直接目的語が3人称単数(本を)の直説法現在形ということを示しています。

 

これが主語が1人称複数「私たち」になったのが①、1人称単数のまま過去形になったのが②、1人称複数で過去形にしたのが③、主語は1人称単数のまま目的語を複数(2冊の本)にしたのが④です。

 

①Guk liburua irakurri dugu.

②Nik liburua irakurri nuen.

③Guk liburua irakurri genuen.

④Nik bi liburu irakurri ditut.

 

すべて太字の助動詞が異なっているのが分かると思います。

複雑ですが、裏を返せば、長い文でも助動詞を見ればその文の構造が分かるということです(便利!)

 

動詞

助動詞があれだけ変化したからには動詞本体は変化しない

 

なんてことはないのです。残念ながら。

 

ただし、動詞の変化は規則的で単純です。

変化も、

完了形不完了形未来形

の3パターンしかありません。

 

完了形は、そこで言及されている時制とかかわりのある場合に用いられます。

ビルバオに旅行する」とか「今日は5時に起きた」とか「昨日その本を読んだ」とかそういう場合です。

Gaur ni bostetan esnatu naiz. 「私は今日5時に起きた。」

gaur: 今日 bostetan: 5時に esnatu: 起きる 

 

不完了形は主に習慣的な行為を表す場合に用いられます。

「毎日学校へ行っている」とか「彼はワインが好きだ」とか「当時は学校に通っていた」とかそういう場合です。

Ardoa gustatzen zaio. 「(彼は)ワインが好きだ。」

ardoa: ワイン gustatu: 「好む」

 

未来形は言葉の通り未来のことや推量を表す場合に用いられます。

Ni bihar eskolara joango naiz.「私は明日学校へ行くだろう。」

bihar: 明日 eskola: 学校 joan: 行く

 

実際にどういう変化をするかというと

完了形辞書に載っている形です。(ikasi: 学ぶ)

不完了形は、動詞の語尾が -ten もしくは -tzen になります。(ikasten

未来形は語尾が -ko-go となります。(ikasteko

 

 

他に動詞の語幹だけで用いる場合もあるのですがここでは割愛。

 

 

文の構造

さて、名詞(格)の話と動詞の話をしたので実際の文の構造の話を少ししたいと思います。

 

英語ともスペイン語とも、そして日本語とも違う、ある特徴をバスク語は持っています。

 

バスク語

同じ単語でも、その単語が自動詞文の主語になるときと他動詞文の主語になるときで、単語の形(格)が異なります

 

実際の例文を見た方が早いですね。

※Aitona は「祖父」という意味です。

 

Aitona etorri da.「おじいちゃんが来た。」

 

Aitonak ardoa erosi du.「おじいちゃんがワインを買った。」

 

上は etorri「来る」という自動詞、下の文は erosi「買う」という他動詞を使った文です。

「おじいちゃん」に注目してほしいのですが、

自動詞文では "Aitona" なのに他動詞文では "Aitonak" となっていますよね。

 

このように、他動詞文の主語には "-ak" や "-ek" という格が付きます。

この格を「能格」といいます。

能格は他動詞文の主語にしか出てきませんが、とても重要です。

 

では自動詞文の主語はというと、先ほどの例文では Aitona だけで何も付いていないように見えますが、実は -a という格が隠れています。

この格を「絶対格」といいます。

絶対格は自動詞文の主語と、他動詞文の目的語にも現れます。

Aitonak ardoa erosi du.

の ardoa「ワイン」の -a が絶対格です。

 

さて、ここでもう一度先ほどの例文を見てみます。

 

Aitona etorri da.

 

Aitonak ardoa erosi du.

 

Aitona の形もそうですが、文の最後の助動詞に注目です。

 

助動詞の話をしたときに、主語や目的語に合わせて助動詞が変化するという説明をしました。

ここで、自動詞文には目的語はないので、助動詞の形が異なっていますね。

 

能格や絶対格が文の中でどのような組み合わせで現れるかによって、助動詞の形が決まるのです。

 

ちなみに先ほどの助動詞の説明では触れなかったのですが、バスク語の助動詞は体系的には4種類に分別されます。

例えば、単純な自動詞文と他動詞文では格の現れ方が違うので(自動詞文に目的語はない)、そもそもの派生元の形が異なるってことです。

ちゃんと勉強するんじゃなければ気にしなくていいです。

 

 さて、ここまでバスク語の特徴的な文法をまとめたつもりです。

なかなか誰にでも分かるように書くのは難しいですね…すみません

 

少しでも参考になればと思います。

それでは。

 

 

追記① 

この記事では文法というか「語」の構造について(形態)書いてきましたが、「文」の構造についても(統語)触れておきます。

バスク語は、語順については自由度がかなり高く、話者が何をスコープに話すかで変わってきます。

それでも一応基本語順はSOVで、日本語と同じです。

欧米の人には「悪魔の言語」とか呼ばれているバスク語ですが、日本人からすると学習する際は取っつきやすいかもしれません。

 

追記②

このブログでは今回の記事で取り上げた中でも特に、助動詞について触れることが多くなると思います。

助動詞は特に難しいのですが、

助動詞の話をしていたら、「あー また主語とか目的語とか自動詞とか他動詞の話してるなー」くらいに思ってください。

結局ほとんどの場合、それ以上でもそれ以下でもないのです。