バスク語を読もう

バスク語読解の記録を不定期に更新

Araututako 1.710 etxe turistiko daude Araban, Bizkaian eta Gipuzkoan / バスクに泊まろう

 

こんばんは。

また記事を読んだので紹介します。

 

  

その前に…

気づけばバスク旅行からちょうど1年が経つ頃です。

ちょっと写真で懐古してみたり。

f:id:Na_EUS:20161214231151j:plain

バスクの道路標識(上がバスク語、下がスペイン語

 

 

f:id:Na_EUS:20170908233436j:plain

オンダリビア(Hondarribia)の路地

f:id:Na_EUS:20170908233449j:plain

ドノスティア(サン・セバスティアン)の夕焼け

f:id:Na_EUS:20170908233556j:plain

ビルバオのサン・マメス!

f:id:Na_EUS:20170908233612j:plain

バスクの猫



去年のブログでも紹介してます。  

 

na-eus.hatenadiary.jp

 

いいとこだったなぁ

 

またいつか行きたいなぁ

 

と想いを馳せながら前回に引き続き、観光に関する記事です。

バスクって観光地としての歴史はまだまだ浅いと思うのですが、だからこその問題もあるようですね。

 

 

Artikulua eta Itzulpena / 記事・訳

 

記事はこちら。ちょっと短めです。

↓ ↓ ↓

 

www.berria.eus

 

etxebizitza turistiko の話です。直訳すると「観光アパート」でしょうか。

たぶんゲストハウスとかドミトリーそういった宿のことを指しているんだと思います。

今回の訳では「ゲストハウス」にしています。

 

 

訳はこちらのリンクから

バスクで宿泊

 

観光地として人気が出てくると非正規の宿も増えてきたりするんでしょうかね。

記事がなんとなくそういう書き方だなと思いました。

 

ちなみに僕がバスクで泊まっていたところもドノスティア(サン・セバスティアン)のドミトリーでした。

A room in the city, your hostel in Donostia - San Sebastián

 

f:id:Na_EUS:20170905231005j:plain

 

清潔でしたけどなかなか窮屈ですねやっぱり。

 

 

Analisia eta Azalpena / 分析・解説

 

今回は「受動表現」を取り上げます。

あえて「受動態」ではなく、「受動表現」と書いています。

 

理由は、

バスク語に受動態はない

からです。

 

あとで詳しく解説します。

 

とりあえず紹介していきます。 

 

一つ目はこちら。 

Jaurlaritzako iturriek zabaldu dutenez, erregistratutako etxeak gainbegiratuko dituzte, frogatzeko, Turismo Legeaz gain, udaletako araudiak ere betetzen dituztela.

 

最初のカンマまでは、「政府の情報源によると」って感じです。

 

Jaurlaritzako iturriek 「政府の情報源が(能格)」

zabaldu dutenez 「広めたものによると」

 dutenez は、助動詞 dute に連体修飾節を作る接辞 -en と具格の格語尾 -ez がついたものです。

 

問題はカンマの後。

 

文全体のメインの動詞述語は

gainbegiratuko dituzte

になります。

 

gainbegiratuko は、「監査する」という意味の動詞 gainbegiratu の未来形です。

dituzte は、主語3人称能格複数目的語3人称絶対格複数であることを示す助動詞です。

 

そうすると、直前に etxeak 「家」という絶対格複数の名詞があるので、これが目的語ということになります。*1

まあ意味的にも「家」は監査をするものではなく対象だということは明らかなので、目的語だってわかりますよね。

 

etxeak を erregistratu 「登録する」の分詞形 erregistratutako が修飾しているので、目的語は

「登録された家」となります。

 

さて、この文ですが、主語がありません

もちろん「政府の情報源によると~」と言っているので、主語は「政府」かなにかだろうなというのは推測できます。

ただ具体的に明記はされていません。

 

このような文は受動表現で訳すとしっくりくるパターンがけっこうあります。

  

ここでは「登録された家は監査されるだろう」と訳しました。

 

 

後半はざっくり解説。

frogatzeko は動詞 frogatu「証明する」の動名詞で、「証明するために」となります。

 

Turismo Legeaz gain は「観光法に加えて」

具格 -z + gain で「~に加えて」という意味になります。

 

udaletako araudiak ere betetzen dituztela

最後の助動詞 dituzte にくっついている -la が名詞節を作っています

したがって「市議会の条例も満たすこと」となります。

 

つまり後半の意味は

「観光法に加えて市議会の条例も満たすことを証明するために」

となります。

 

文全体では

「政府の情報源によると、観光法に加えて、市議会の条例も同様に満たしていることを証明するために、登録された家が監査されるだろう。」

となりますね。

  

 

 

二つ目はこちら。

Espero da aurki ezagutzea txosten horren ondorioak.

 

この文を見て「あれっ」と疑問に感じた人はバスク語のことをけっこう知っている人です。

まず espero は「期待する、待つ」という意味です。

そして助動詞 da主語3人称絶対格単数ということを示していて、且つ、この文は自動詞文だということを示しています

正確に言うと、主語以外の要素は想定されないよ ってことです。

 

しかし、「期待する、待つ」はどう考えても、動作主である主語その目的語を要求する他動詞です。

 

矛盾しますよね。

そういう意味の「あれっ」です。

 

 

どうなっているのかというと、

ここでは動詞 espero が「自動詞化」されて助動詞 da を要求しています。

この用法も受動的なニュアンスを出したいんじゃないかなと思います。

 

「期待される」ことは何かというと、

txosten horren ondorioak 「このレポートの結論」

aurki 「すぐに」

ezagutzea 「知ること」

 

「このレポートの結論をすぐに知ること」

となります。

ezagutzea は ezagutu「知る」の動名詞絶対格)です。

 

 さて、誰が期待しているのか、というと、直前の文章で政府が調査しようとしているという話が出てくるので、政府が期待しているのだと考えられます。

 

無理やり訳すと

「このレポートの結論をすぐに知ることが(政府によって)期待されている」

となりそうです。

 

でもやっぱり受動態のない言語で受け身のニュアンスを出そうとすると日本語には訳しにくいですね。

「政府はこのレポートの結論をすぐに知ることを期待している」

と能動的に訳した方が分かりやすいと思います。

 

 

さて。

冒頭に、バスク語に受動態は無いよ と書きました。

でもやっぱり、受動的なニュアンスを出したいときもあると思うのです。

また、周りを受動態のある言語に囲まれているので、バスク語だけ受動態がないといろいろ不便な時もあると思うのです。

 

じゃあどうやってそのニュアンスを出すのかというと、

いくつかの方法があります。

 

自動詞化する

今回2つ目に紹介した文がこれです。

受け身で表現したい他動詞*2と、自動詞文を示す助動詞を組み合わせることによって、受け身のニュアンスを表すことができます。

この場合、主語(動作主)は登場しません(登場できない)。

 

分詞を用いる

今回は出てきていませんが、動詞を分詞化する方法もあります。

例えば、次の文章では、ezagutu「知る」を分詞化して ezagutua とし、「その本は、みんなに知られている」となります。

 

Liburu hori, denek ezagutua.*3

liburu: 本 dena: みんな

 

この用法では、主語(動作主)が能格を伴って登場します

 

 

主語を明記しない

これは用法というには大げさですが、あえて(?)主語を明記しないことで

「<目的語>が~される」

というニュアンスが出ることがあります。

今回最初に紹介した文ですね。

 

他にも語順を変えてニュアンスを出すということもあるかもしれません。

受動態がないというとやっぱり日本人からしてもちょっと慣れないですよね。

 

ですが、バスク語のように「能格」を用いる言語は受動態を持たないことがしばしばあるみたいです。 

 

…このあと僕の独り言が始まるのでさらっと聞き流してください。

 

能格を持つ言語(能格言語)は、言語学の世界で逆受動anti-passive)と呼ばれる用法を持っていることがよくあります。ここら辺の領域は闇が深いです。

 

ということはバスク語にも逆受動があるの…??

 

声が大きくなってしまいました。。

僕らがよく知っている受動態は、目的語を主語にして他動詞の形を変えることによって主語を消しますよね。

逆受動というのは、本来能格を伴って現れるはずの動作主が絶対格でなり(これを言語学の世界では、「能格から絶対格への『昇格』」といいます)、動詞の形が変わることで目的語が「消える」ことを言います。

しかしバスク語は、この昇格が起こった際に、動作主と被動作主(目的語)が同じ格(絶対格)で現れます(目的語が消えない)。

 

そのためバスク語に逆受動はないと言う人もたくさんいます。

 

僕にはまだそこら辺を判断するほどの知識がないので、紹介にとどめておきますが、今回最初に紹介した文はこのいわゆる逆受動なんじゃねぇかな…なんて思っています。

この文の da という助動詞は潜在的に動作主(ここではJaurlaritza「政府」)を示していて、動作主(Jaurlaritza「政府」)と被動作主(ezagutzea「知ること」)がどちらも絶対格で存在してるんじゃないかな…と思うのです。

 

…はい。

僕個人の考えというか想像を綴っただけなので読み飛ばしてください。

 

本当はもういくつか紹介したいなという文があったのですが、これ以上書くと収拾がつかなくなるのでここまでとさせてください。

 

またそのうち更新します。

 

Hitzak / 単語リスト

今回出てきた単語です。

arau と araudi でどのくらい意味の違いがあるのかな。。

 

単語 意味
arau 規則、規律
araudi 規則、条例
arautu 規制する、規定する
argitu 明らかにする
aurki まもなく
azterlan 調査
behin-behinean さしあたり、仮に、一時的に
berriz 再び、代わりに
bidatu 導く、案内する
daramatza ← eraman
datu データ
erabil 使う、利用する
erdi 半分
erregistratu 登録する
errepikatu 繰り返す
etxebizitza 家、アパート
ezagutu 知る
frogatu 証明する、示す
gainbegiratu 監督する、視察する、チェックする
gainera さらに
gisa 方法、形式
hamar 10
helburu 目的
hilabete 月(month)
horretara そのように
iragarri 知らせる、予測する、宣伝する
iturri 情報源
jabe 持ち主、所有者
jasotu 拾う、集める、作る、改善する
Jaurlaritza 政府(特にバスク政府)
kanpo 外、範囲外
komertzializatu 商品化する、市場に出す
kontsumo 消費
legez 合法的に
onartu 受け入れる、認める、承認する
ondorio 結論
oporraldi 休暇、休日
sail 部門
txosten 報告書
udal 市役所、市議
udalerri
urtebete 一年間、一年
-z gain -に加えて
zabalik 開いている
zerrenda リスト

*1:etxe 「家」の能格単数形も etxeak なのでたまに混乱しますが、先述の通り dituzte は3人称能格複数の主語と3人称絶対格複数の目的語を導く助動詞なので、ここの etxeak は「絶対格複数」だと分かります。

ちなみにetxe の能格複数形は etxeek となります。

*2:そもそも受け身の形をとることができるのは他動詞です。「走る」や「行く」といった自動詞は受け身にできないですよね

*3:A.R.King (2012), The Basque Language P.408 から引用