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バスク語読解の記録を不定期に更新

«Demokraziak deitzen gaitu» / カタルーニャとバスクのデモクラシー

なんとしてでも10月1日までに更新したいと思っていたので、間に合ってよかったです。

 

理由は、10月1日に予定されているカタルーニャ独立をめぐる住民投票

 

一見、バスクは関係なさそうですが、カタルーニャ独立運動が佳境の今、バスクでもこの独立運動を支援する動きが出てきています。

 

 

 

あとでもう少し掘り下げて解説しますが、、、

 

バスクカタルーニャ共闘しているとか、バスクもこれに乗じて独立の機運を高めようとか、そういうことはないようです。

 

 

Artikulua eta Itzulpena / 記事・訳

 

記事はこちら。今回は長いです。総語数357!

↓ ↓ ↓

 

www.berria.eus

 

リンク先の記事を見ると分かりますが、カタルーニャの旗にまざってバスクの旗が掲げられています。

f:id:Na_EUS:20170930003553j:plain

 

そもそも「バスクの独立」というキーワードは、割と有名な話で、以前はETAという過激派がたびたびテロを起こしていました。

そのためバスクのイメージも「危ない」というキーワードが未だにググると出てくるほどです。

 

ただ、現在はETAは活動停止、完全武装解除をしていて、全体としても独立の機運は低くなっています。

2016年の調査によると、バスク地方のスペインからの独立機運は過去最低となっていて、バスク州市民の20%程度でした。

 

現在のバスクでは独立運動よりも平和や安定を重視する傾向が強く、1996年にはおよそ60%の市民が暴力行為を問題視していたのが、さきほどの調査時の2016年には1%まで激減しています。

 

ただ、民主制というものには関心が強いようです。

カタルーニャと同じく、バスクには特有の文化や言語があり、それらを背景に自分たちの国を持ちたいというカタルーニャの人々の機運には共感するのではないでしょうか。

 

バスクで独立機運が低く安定志向が強いのは、以前はテロ組織によって人々の生活が脅かされていたものが、現在は平和な生活を送れるようになっているからなんじゃないかなと思っています。

嘘か本当か、毎年9月11日のカタルーニャの日に行われるデモでは、100万人集まろうとも窓ガラス1枚割れないそうです。

もともと比較的平和なカタルーニャだからこそ、独立の機運が高いのかな、なんて思いました。(個人の感想です)

 

(そんなことはないと思いますが)万が一スペイン政府がカタルーニャの独立を認めたとしても、バスクの人々がすぐに「じゃあウチも」となることはないんじゃないかなと思います。

 

長くなりましたが、今回の記事の訳はこちらのリンクから

カタルーニャ住民投票

 

固有名詞がたくさん出てきてちょっとめんどくさかったのですが、だいたいググると出てきます。便利な世の中。

 

ANC:カタルーニャ国民会議

AsCATasun:バスク語の "askatasun" 「自由」とカタルーニャ(CAT)を掛けたスローガン(たぶん)

EAJ:バスク民族主義党(バスク州政府与党、中道右派

EH Bildu:エウスカル・エリア・ビルドゥ(バスク州政府第2勢力、左派)

Elkarrekin Ahal Dugu:スペイン語で "Unidos Podemos" 。バスクの左翼政党

PSEバスク社会党(スペインの二大政党の1つであるスペイン社会労働党バスク支部

PP:国民党(スペイン二大政党のもう一方)

lehendakari:レンダカリ(バスク政府首班のこと)

 

Analisia eta Azalpena / 分析・解説

 

こちらの文を解説します。

 

Kataluniak bere etorkizuna erabakiko du: izan nahi duen estatu independente bat errepublika gisa ala autonomia mugatu bat politikoki eta ekonomikoki porrot egin duen estatu sasidemokratiko baten barruan

 

ダブルコロンまではとてもシンプルです。

助動詞 du があるので、3人称単数しか出てこない、いわゆるSOVの文だと分かります。

 

Katalunia-k能格)「カタルーニャ」 能格があるのでこれが主語

bere etorkizun-a絶対格)「その未来」 これが目的語

erabakiko は「決める」という意味の動詞 erabaki の未来分詞です。

 

カタルーニャは自分たちの未来を決めるだろう」

となります。

 

ダブルコロンより後が難しいのですが、難しいポイントとして

① 2つの "duen"

② 接続詞 "ala" の影響範囲

がありました。

 

まず①の duen について

duen は助動詞 du に接尾辞 -en がついているものなのですが、ややこしいことに duenという形になる用法が2種類あります。

 

一つ目は連体修飾節を作るための接尾辞

二つ目は「~かどうか」という間接疑問の意味を付与する接尾辞

です。

 

連体修飾節というのは、名詞を修飾する節のことです。

日本語で言うと、例えば

「彼が見た男」の「彼が見た」の部分が連体修飾節になります。

 

日本語でも動詞の形が「~た」のようになりますよね。

 

それと同じイメージで、バスク語も動詞述語の中の助動詞に接尾辞 -en がつくのです。

 

 

間接疑問も理屈は同じで、

「彼が来たのかどうか私は知らない」という文だと「彼が来たのかどうか」の節を作るために、接尾辞 -en が用いられます。

 

同じ形なのにどうやって見分けるのかというと、それはもう文脈判断としか言えないのですが、

連体修飾節だと当然、その節によって修飾される名詞があるはずなので、助動詞-en の直後に名詞があることが見分けるポイントになります。

 

たとえば次の例文では、ikusi dugu-n「私たちが見た」が修飾している名詞 gizona「男」が、接尾辞がついた助動詞 dugun の直後に来ています。

 

[ ikusi dugun ] gizona 「私たちが見た男」

 

ということで、もう一度ダブルコロンの後を見てみると…

 

izan nahi duen estatu independente bat errepublika gisa ala autonomia mugatu bat politikoki eta ekonomikoki porrot egin duen estatu sasidemokratiko baten barruan

 

duen が二つあるのですが、どちらも直後に estatu 「国家」という名詞があります。

 

「直後に名詞があるしどちらも連体修飾だ!」

と最初はそう思ったのですが、、

一つ目の duen を連体修飾だとするとこの箇所の意味が取れません。

直前の izan は英語のbe動詞のようなもの、 nahi は want to の意味なのですが、

直訳すると

「~でありたい国家」

となり

肝心の「~でありたい」の中身が分かりません。

 

結論から言うと、

一つ目の duen は間接疑問「~かどうか」

二つ目の duen は連体修飾節語尾

となります。

 

つまり、「~でありたい」の中身が duen の後ろに続くのです。

そしてポイント②の ala についてもここで分かるのですが、「~でありたい」の中身が2つあり、その2つが接続詞 ala で結ばれています

 

というわけで先ほどの文をものすごく簡潔に表すと

izan nahi duen A ala B

となります。

ala は英語でいうと or なので、

「Aでありたいか、それともBでありたいか」

という意味になります。

 

さて、二つ目の duen は連体修飾なのですが、ここでは

autonomia mugatu bat politikoki eta ekonomikoki porrot egin duen

この部分が、連体修飾節です。

 

politikoki eta ekonomikoki 「政治的、経済的に」

autonomia mugatu bat 「制限された自治体」

porrot egin du 「散在する」

 

そしてこの連体修飾節に修飾されている名詞が estatu 「国家」なので、

「政治的、経済的に制限された自治体が散在する国家」

という意味になります。

 

ダブルコロンの後ろを整理します。

izan nahi duen A ala B

Aでありたいか、Bでありたいか

 

 A: estatu independente bat errepublika gisa

  共和国として独立した国家

 

 B: autonomia mugatu bat politikoki eta ekonomikoki porrot egin duen estatu sasidemokratiko baten barruan

  政治的、経済的に制限された自治体が散在する疑似民主国家の内側(にある)

 

というわけで、全体の訳は

カタルーニャは自分たちの未来を決めるだろう。共和国として独立国家でありたいか、政治的・経済的に制限された自治体が散在する疑似民主国家の中にいたいか

となります。

 

さて、背景の解説もしていたら長くなってしまったので、今回は解説はこの箇所だけにします(けっこうボリュームもあったし)。

 

長い記事ではあったのですが、文法的に複雑な箇所はそこまで多くなかった気がします。

もちろん訳しにくいところはたくさんあったのですが、文法が難しいというよりは凝った表現を使ってるなという箇所が多い気がしました。

 

また(年内には?)更新します。

 

Hitzak / 単語リスト

めっちゃありますね。汗 

 

単語
abiatu 出発する、始まる、起動する、立ち上げる
adierazi 説明する、宣言する、述べる
akordio 同意、和解
ala もしくは<接>
antolatzaile 主催者
aparteko 離れた、分けられた、並外れた、例外的な
arabera ~によると <後>
aste
astelehen 月曜日
atzo 昨日
aukera 選択、選択肢、機会
aurtengo 今年の、今年は
autonomia 自治、自治権
babes 保護、支援
babestu 保護する、支援する
baita ~もまた
baizik eta …ではなく…
banaketa 分布、区分、区別
behin eta berriro 何度も
berreskuratu 回復する、回収する、取り戻す
berriro 再度、もう一度
berriz もう一度、一方
bestalde しかしながら、一方で
bidez 途中で、正しく
bigarrenari 2番目
bihar 明日
bildu 集める、拾う
biltzar 会議
borondatea 意志、意欲、願い
boterea 権力、力
boto 投票
botoa eman 投票する
bozeramaile スポークスマン、機関紙
bozkatu 投票する
deitu 電話する
demokratiko 民主的な
demokrazia 民主主義
EAJ Euzko Alberdi Jeltzalea バスク民族主義
egoera 状況
egoitzen 本部、住居
egotzi 投げる、解雇する、非難する
eguerdi 昼間、正午、南
ehunka 何百の
ekinaldi 試み
ekitaldi 式典
ekonomikoki 経済的に、つつましく
elkar お互い
elkarretaratu 集まる
elkarrizketa 会話、対話
elkartu 会う、集まる、集める
eman 与える
epaitegi 裁判所、法廷
erabaki 決定する
erabili 使う、扱う
eragin ~させる、動かす、影響する
eragotzi 妨げる、禁止する
erakutsi 示す、教える
erantzun 応答する、答える、戻す、反応する、反映する
erreferendum 国民投票
errepublika 共和国
esan 諺、命令、指令
esanahia 意味
esaterako 例えば
esku 手、権力
eskubide 権利
eskura 手にしている、手中にある
estatu 国家、政府
etorkizun 未来
euskarri サポート
eztabaida 主張、議論
falta 間違い、過失
formula 方式、決まったやり方
galdeketa 尋問、取り調べ
garai 瞬間、時期、時間、季節
gehiago もっと、より多くの、~以上の
gero ~なので、~ということで
gisa 方法、方式、形式
gobernu 政府
harrokeria 傲慢、尊大
hautetsontzi 投票箱
herri 地域、町、市民
herritar 同郷の人、同胞、市民
hil
hizpide 主題、トピック、正しさ、道理
horrela そのように、その方法で
identitate 同一であること、一致、帰属意識
independente 独立した
inoiz 決して、今まで
inolako どんな…もない、非常に多くの
irabazi 勝つ、勝ち取る
irail 9月
iritsi 到着する、達する、達成する
iritzi 意見
izateari 性質、存在
izugarri 大きな、巨大な
jaurlaritza バスクの)政府
jende 人々
kale 通り
katalan カタルーニャ人、カタラン
katalunia カタルーニャ地方
konbentzimendu 確信、信念
konfiantza 信頼
konpromiso 約束
kontseiluren 助言、提案、議会
koordinakunde 責任者、まとめ役
lagun 仲間、友人、同僚
larunbat 土曜日
legebiltzarkide 議会議員(特にバスクの)
legez 法律上
lehen 以前の、最初に、過去
lehendakari 議長、首相、大統領
lelopean ~のもとで
libre 自由な、自由に
manifestazio デモ
ministro 大臣
mobilizazio 動員
moderno 現代の、近代の
mugatu 制限する、定義する、定義
nabarmendu 示す、強調する、目立つ、披露する
nahiz ~も、~も<接>
nazio 国家、国民
ohiak 前の、前回の、元
ondorio 結果、結論
ordea しかしながら、一方で
ordezkaritza 代表、代表団
osoko 全体の
ospatu 祝う
ostiral 金曜日
plataformak プラットフォーム、政府の宣言・発表
politikoki 政治的に
porrot 失敗、倒産
prestatu 準備する、用意する、訓練する
prozesu 過程、進展、裁判、公判
saiatu 試す、試みる
salatu 明らかにする、暴露する、告発する
salbuespen 例外
sare 網、ネットワーク
sasidemokratiko 疑似民主制
sindikatu 連合、労働組合
transbertsal 横切る、横断の
urri 10月
urtero 毎年
uste 意見
vaudeville 軽喜劇、ノードビル
zilegi 合法の、正当な
ziurtatu 確かめる、チェックする
zuri